居酒屋の売上を、長く支えるのは「常連」と「宴会」だ。——だが多くの店で、その二つは“運任せ”になっている。一見さんが2回目に来てくれる確率は約3割。年末に大宴会を仕切ってくれた幹事が、翌年もうちを選んでくれる保証はどこにもない。そして3回足を運んでもらえれば、その後は約9割が通い続ける(POS+/タカラベルモント)。最初の数回と、宴会の“次”をつなげられるかどうかで、一人のお客様が生涯に落としてくれる価値はまるで変わる。都内の路地裏で小さな居酒屋を営む、ある店。常連向けのドリンクサブスク、宴会幹事のリピート設計、閑散日の狙い撃ち送客を、LINEのデータで仕組みに変えた。一斉配信でブロックを増やしていた店が、関連性配信で“通う理由”を設計し直すまでの全プロセスを公開する。
舞台は、路地裏の小さな個人居酒屋
舞台は、都内の駅から数分、細い路地を入った先にある個人経営の居酒屋だ。一枚板のカウンターに、暖色の提灯。壁には全国から少しずつ仕入れた日本酒が並び、奥には宴会向けの小上がりがある。看板メニューは、その日の朝に決まる旬の一品と、店主が手をかけたつまみ。チェーンには出せない“顔の見える一軒”が、この店の矜持だ。
切り盛りするのは店主とスタッフ数名。常連の顔と名前は店主の頭の中に入っているし、近所の口コミで宴会の予約もそれなりに入る。だが、繁盛の手応えとは裏腹に、経営の足元はいつも揺れていた。「金曜と土曜は満席。でも火曜・水曜はガラガラ。年末は宴会で回るけど、明けた1月は静かになる。誰が常連で、誰が一度きりで離れたのか、正確には分からない。全部、自分の感覚と勘でやっていました」。店主はそう振り返る。

データで見る、飲食店のLINE配信の“不都合な現実”
施策の話に入る前に、まず業界の数字を直視したい。多くの居酒屋がLINE公式アカウントを持ち、クーポンを配っている。だが、その配信は本当に届いているのか。LINE公式アカウントには、業種ごとにくっきりとした“ブロックの壁”がある。
| 業種 | LINEブロック率(中央値) |
|---|---|
| 日用品 | 19.1% |
| 飲食← 本件の業種 | 22.8% |
| 化粧品 | 34.8% |
| 人材 | 35.8% |
| 医療・美容 | 37.0% |
出典:Social Plus「LINE公式アカウントのブロック率」2024年調査(友だち1,000人未満を除外)。平均ブロック率は29.7%。飲食は業種中央値22.8%で平均よりは低いが、頻度の高い一斉配信を続ければ簡単にこの水準を超えていく。
飲食の業種中央値は22.8%。平均(29.7%)よりは低い。だが安心はできない。重要なのはブロックの理由だ。消費者調査では、LINE公式アカウントのブロック経験は70%、その理由の第1位は「配信の頻度が多すぎる」(26.5%)(モビルス2025・655名)。“本日生ビール半額”“週末空いてます”を毎日のように一斉送信すれば、飲食の22.8%も簡単に超えていく。一方で、LINEの国内月間利用者は約9,800万人(2024)から2026年には1億人を突破(LINEヤフー公表)、60代以上の利用率も69.0%。常連も、宴会幹事も、ほぼ全員がLINEにいる。リーチの母数は巨大なのに、配信の仕方を間違えると、その大半に届かなくなる。
居酒屋にとって、これは死活問題だ。グルメサイトの掲載料は上がり続け、一見さんを広告で買い続ける構造は早晩立ち行かなくなる。だからこそ一度来てくれた人との接点=LINEが頼みの綱になる。なのに、その接点を「全員への安売り」で消耗させてしまえば、最もコストの安い再来店チャネルを、自ら細らせることになる。こだわりの一軒を、毎日の半額クーポンで売れば、その世界観ごと安っぽくなる——リーチを取りにいくほど店の格が削れる、この矛盾が最初の壁だった。
飲食店の“穴”は、宴会の次・常連の継続・閑散日の三つに開いている
この店の課題を分解すると、売上の穴は大きく三つに分かれていた。
一つ目は宴会の“次”が無いこと。忘年会や歓送迎会で大人数を仕切ってくれる幹事は、店にとって最高の顧客だ。一度に数万円を落とし、しかも“次の店選び”の決定権を握っている。なのに多くの店で、宴会は「その日かぎりの大きな売上」で終わり、幹事との関係は宴会が終わった瞬間に切れてしまう。本来、幹事こそ最も常連化させやすい層なのに、だ。
二つ目は常連が“なんとなく”続いているだけで、続ける仕組みが無いこと。よく来てくれる人も、忙しくなったり近くに新しい店ができたりすれば、自然と足が遠のく。“通う理由”を店側から設計していなければ、常連は常にこぼれ落ちていく。
三つ目は閑散日(平日)の空席。金土が満席でも、火水がガラガラなら、家賃と人件費は平日も等しくかかる。週末の混雑を平日へならせれば、同じ席数のまま売上は底上げできる。だが一斉配信の安売りで平日を埋めようとすると、週末に普通に来る常連にまで割引が届き、単価を自分で削ってしまう。
「この三つを、勘ではなく仕組みで埋めたかった」。店主の課題意識は明確だった。サブスクラインを選んだのは、サブスク・予約・配信・会員証・ポイントをLINEひとつの中で、来店データとして地続きに扱えるからだった。
なぜ「常連ドリンクサブスク」なのか——通う理由を、店側から設計する
この店がまず軸に据えたのが、常連向けのドリンクサブスク(通い放題・回数券)だった。たとえば「月額で、来店ごとに最初の一杯が無料」「10杯ぶんの回数券を先に購入」といった形。一杯ごとの都度会計ではなく、“また来る前提”の状態を、お客様に持ってもらう設計だ。
これは単なる割引の話ではない。人は、サブスクや回数券を持っていると「元を取りたい」「もう一回行こう」と自然に考える。「次にいつ行くか」を毎回ゼロから判断させない——“2回目来店の崖”の正体は、多くがこの「行こうか、どうしようか」の小さな摩擦だ。通う理由が手元にあれば、その摩擦が消える。冒頭のデータ(3回来れば約9割が定着)を、サブスクが構造的に後押しするわけだ。
サブスクラインでは、こうしたサブスク(通い放題)や回数券を、LINE上で完結して提供できる。お客様はLINEから申し込み、決済し、来店時はLINEの会員証を提示するだけ。店側は、誰がどのプランで、いつから何ヶ月通っているか、どのくらいの頻度で来るかを、データとして把握できる。“常連”が、店主の頭の中の記憶から、続く・続かないが見える記録に変わった。
宴会幹事を“常連”に変える——一度きりの大宴会で終わらせない
この店が飲食ならではの伸びしろとして最も手応えを感じたのが、宴会幹事のリピート設計だ。前述のとおり、幹事は一度に大きな金額を落とし、次の店選びの決定権を持つ、極めて価値の高い顧客だ。ここを“その日かぎり”で手放すのは、もったいなさすぎる。
仕組みはこうだ。宴会予約の段階で、幹事にLINEの友だち追加と予約のLINE管理を案内する。当日の前にはコースや人数の最終確認、アレルギーや席の要望をLINEで受ける。そして宴会が終わった翌日に、お礼と「次回のご予約は幹事さま特典つきで」という一通を、自動で届ける。さらに、その幹事が次に宴会を企画しそうな時期(歓送迎会や忘年会のシーズン前)を見計らって、そっと声をかける。
ポイントは、これを幹事一人ひとりの履歴に合わせて送れることだ。「春に歓迎会で使ってくれた幹事」には秋の歓送迎会前に、「忘年会の常連幹事」には11月に。全員に同じDMを送るのではなく、その人がまた幹事になりそうな文脈で、ちょうどよく届く。一度きりの大宴会が、年に何度も戻ってくる関係に変わり始めた。
見落とされがちだが、幹事のリピートは新規集客の何倍も効率がいい。一人の幹事が次の宴会で連れてくるのは、十人前後の参加者だ。その中には、店を気に入って個人客として再来する人も、次に自分が幹事になったときにこの店を選ぶ人も出てくる。つまり、幹事一人をつなぎ留めることは、その先にいる何人もの“まだ会っていない常連候補”をつなぐことでもある。広告費をかけて一人ずつ集めるより、すでに大人数を連れてきてくれた幹事との関係を切らさないほうが、よほど安く、確実に客が増える。
入口でつまずかせない——あいさつ+ステップ配信
常連化の手前、初来店・友だち追加直後のオンボーディングも整えた。初めて来てくれた直後は、最も気持ちが温まっている瞬間であり、同時に最も忘れられやすい瞬間でもある。ここを“放置”すると、せっかくの初来店が一度きりで終わる——これが2回目の崖の入口だ。
そこで、友だち追加と初来店をトリガーにあいさつメッセージとステップ配信を自動化した。1通目は感謝と、店の看板メニュー・おすすめの楽しみ方。数日後に「そろそろまた飲みたくなる頃」を見計らった次回のおすすめ、さらに後日に常連サブスクや会員証の案内——と、急かさずに、しかし確実に“2回目への橋”を架ける。スタッフが一人ひとりに手作業で送る必要はない。一度設計すれば、新しいお客様全員に、同じ丁寧さで届く。
「初めて来てくれた人を、その日の忙しさの中で全員フォローするなんて、現場では無理なんです。それを仕組みが代わりにやってくれる。“また来てくださいね”が、ちゃんと一人ひとりに届くようになった」。
解決の核:AIパーソナライズ配信——配信を「1人ずつ」に変える
ステップ配信で“2回目”をつくった先で、この店が最も価値を感じたのがAIパーソナライズ配信だ。これは、配信対象の一人ひとりに合わせて、文面・画像をAIが個別に生成する機能だ。来店履歴、好み(日本酒派か、料理目当てか)、来る頻度、宴会幹事か個人客か、最終来店からの間隔を踏まえ、「日本酒のお好きな常連さまへ、新しく入った限定の一本」「前回コースを気に入ってくれた幹事さまへ、季節の宴会コースのご案内」「しばらくお見えでない方へ、そっと一杯のお誘い」といった“その人あての一通”を、人手をかけずに用意する。
世界観を大事にする一軒にとって、これは決定的だった。毎日の半額クーポンは店の格を薄めるが、“自分宛て”の一通は、開いた瞬間からその店の続きになる。送る相手だけでなく“中身”まで一人ひとりに合わせることで、配信そのものが、店の格を削るどころか、むしろ世界観を延長する接点に変わった。
そして何より重要なのが、送信前に必ずスタッフが確認・承認すること。AIが勝手に送ることはない。AIはあくまで下書きまで。最後に送るかどうかを決めるのは、いつも人だ。スピードと、店の空気を守る慎重さ。その両立が、こだわりの店でも安心して使える理由になった。
一斉配信 vs AIパーソナライズ配信——同じ条件で比べたデータ
この店が同条件で比較したところ、差は明確だった。
配信の反応率(URLタップ率)は、一斉の約4%から、パーソナライズで約13%へと約3倍。そして“自分向け”の情報が届くほど、ブロック率は飲食の業種中央値22.8%を下回る約14%へと下がった。送る数を増やしたのではない。一通の精度を上げた結果だ。

なぜ、関連性が上がるとブロックは減るのか
理屈はシンプルだ。ブロック理由の第1位は「頻度が多すぎる」(モビルス2025)。裏を返せば、“自分に関係ない配信”が多いほど、頻度が「過剰」に感じられる。日本酒目当ての常連に毎週「食べ放題フェア」が届けば、それは“多すぎる”になる。逆に、一通一通が自分向けなら、同じ通数でも“ちょうどいい”に変わる。AIパーソナライズは、配信の関連性そのものを引き上げることで、頻度の体感を下げ、ブロックを減らす。この店は月8回だった配信を月4回へ意図的に減らし、その分、一通の質に振り切った。送る数ではなく、一通の関連性で勝つ——こだわりを守りたい飲食店ほど、この発想が効く。
閑散日の空席を埋める——セグメント配信+クーポンで“平日に行く理由”をつくる
飲食店の利益を最も削るのは、空席で過ぎていく平日の夜だ。週末は満席でも、火曜・水曜がガラガラなら、家賃と人件費は平日も等しくかかる。だが、全員に一斉の平日割引を送れば、もともと週末に普通に来る常連にまで割引が届き、単価を自分で削ることになる。
サブスクラインのセグメント配信なら、来店データをもとに会員を来店曜日・頻度・最終来店日で切り出せる。「ふだん金土に来る人ではなく、平日でも動けそうな層」「しばらく来ていない近隣の人」だけを狙って、平日来店の理由(その日だけの一品、平日限定の小さな特典)をそっと届ける。空席を埋めるのは、全員への安売りではなく、“来られる人にだけ、ちょうど効く一通”だ。
同じ仕組みは休眠客の掘り起こしにも効く。「前は月2回来ていたのに、ここ数ヶ月ご無沙汰の常連」を、来店間隔の異常から見つけ出し、気持ちが離れきる前に、そっと声をかける。常連に不要な値引きを連発して単価を削ることなく、空席と離反だけを、ピンポイントで埋め直す。配信が“全員への安売り”から、“需要のすくい上げ”に変わった。
コース・予約のリマインドと、事前注文・事前決済で当日をなめらかに
飲食、とりわけ宴会では、当日のオペレーションそのものが体験を左右する。サブスクラインでは、予約の確認・前日のリマインド・コースの最終確認をLINEで自動化できる。幹事は紙や電話のやり取りから解放され、店側は当日の人数違いや無断キャンセルのリスクを減らせる。
さらに、モバイルオーダー・事前注文/事前決済にも対応する。宴会コースや飲み放題の事前決済、混雑時のスマホからの追加注文、会計の事前精算——LINEから完結する。「幹事が当日バタバタしない」「会計で列ができない」。“予約する”“注文する”“払う”が一本の動線になることで、現場の負担が減り、その時間をお客様への接客に回せるようになった。
リッチメニューの出し分けで、常連・宴会幹事・新規に“別の入口”を見せる
LINEのリッチメニュー(トーク画面下のメニュー)も、全員に同じものを見せる必要はない。サブスクラインでは、常連サブスク会員・宴会幹事・まだ来店前の友だちとで、リッチメニューを出し分けられる。
常連サブスク会員には「会員証」「サブスクの利用状況」「今日のおすすめ」を大きく。宴会幹事には「宴会コースを見る」「宴会の予約・相談」を前面に。まだ来ていない友だちには「初来店の方へ」「席を予約する」を。同じ公式アカウントなのに、相手の状態に合わせて“次の一歩”だけを差し出す。迷わせない動線が、初来店から常連サブスクへの引き上げと、宴会のリピートを後押しした。
会員証・ポイントで、“通うほど特別になる”を可視化する
常連体験を支えたのが、LINEの会員証とポイントだ。来店時はスマホのLINE会員証を提示するだけ。来店や注文に応じてポイントが貯まり、次の一杯や限定メニュー、宴会の特典に使える。
ポイントは単なる値引きの仕組みではない。「通うほど、自分がこの店のいい常連になっていく」という実感を可視化する装置だ。来店が記録され、ポイントが積み上がり、常連としての関係が深まっていく。その積み重ねが、足が遠のく手を止める。サブスクの継続率は、こうした“通う実感”の設計に支えられている。
AIエージェントが、“次の一手”を提案し続ける
ここまでの分析と配信を、毎日人手で回すのは現実的でない。仕込みと接客に追われる個人店ならなおさらだ。そこで効いたのがAIエージェントだ。来店データと売上を読み、「来週の火・水が予約薄。平日に動けそうな○名へ、送客の一通を」「忘年会シーズン前。昨年の幹事○名へ、コースのご案内を」「しばらくお見えでない常連○名へ、そっとお誘いを」といった打ち手を、根拠つきで提案する。
そして何より重要なのが、AIが勝手に送らないこと。提案された配信は、必ずスタッフが内容を確認し、ワンタップで承認して初めて実行される。分析 → 提案 → 承認 → 実行のループが回り、「忙しくて今週まだ何も配信していない」がなくなった。最後の判断は、いつも人が握っている。属人化していた“店主の勘”が、仕組みとして回り始めた。
この閑散日への送客と休眠掘り起こしから、ガラガラだった平日の予約数は約34%増。週末の混雑を平日へならせたことで、同じ席数のまま売上の底が上がった。来店の“間隔”と“曜日”を見ていれば、空席を埋める一手は、勘に頼らず打てる。それが、来店データを持つ最大の見返りだった。
導入後の成果
配信を減らしたのに、反応は増えた。送る相手だけでなく“中身”まで一人ひとりに合わせ、サブスクで“通い続ける理由”を、宴会幹事に“また選ぶ理由”を設計したことで、ブロックは下がり、2回目来店が増え、常連サブスクの継続率が高い水準で安定し、閑散日が埋まり、既存客のLTVが伸びた。グルメサイトで一見さんを買い続ける消耗戦から、一度来てくれた人と長く付き合うモデルへ——店の世界観を一切崩さずに、データは明確に動いた。
お客様・スタッフの声
日本酒が好きなんですが、新しい一本が入るとちゃんと教えてくれる。自分宛てに来る感じがして、つい開いてしまう。回数券があるので“今日は一杯だけでも寄ろうかな”が増えました。
── 常連サブスク会員(30代・男性)
毎年の忘年会で幹事をやっています。終わった翌日にお礼が来て、シーズン前にまた声をかけてくれるので、店を探し直す手間がない。気づいたら“いつもの店”になっていました。
── 宴会幹事(40代・女性)
お客様の来店歴が画面で分かるので、声かけが具体的になりました。“前回の◯◯、good でしたか”が言える。配信も、送る前に必ず確認できるので、変なものは出ません。
── 店舗スタッフ
平日の空席が一番の悩みでした。誰に、いつ、何を送るべきかをAIが提案してくれるので、仕込みで手一杯でも送客が止まらない。ブロック率を見ながら頻度を調整できるのも大きいです。
── 店主
これからの展望
次に見据えるのは、来店データと味の好みを組み合わせた“一人ひとりの一軒”の設計だ。データが積み重なるほど、AIの提案はこの店らしく賢くなる。日本酒派には新着の限定酒を、宴会幹事には次のシーズンの便りを、平日に動ける層には空席のお誘いを——。「送る数」ではなく「届く精度」で勝負する方針は、来店データが厚くなるほど効いてくる。常連が離れる手を止め、宴会が何度も戻り、一人のお客様と長く付き合うほど、その価値は複利で積み上がる。
「サブスクは値引きでは?」——よくある不安と、その答え
常連サブスクや回数券と聞くと、「結局は値引きで、客単価を削るだけでは」と身構えるオーナーは多い。だが、この店の運用はその逆を行った。サブスクは“割引”ではなく、“通う頻度を上げる装置”だ。来店ごとの一杯目を無料にしても、二杯目・三杯目とつまみが乗れば、一回あたりの単価はむしろ下がりにくい。そして何より、来店回数そのものが増える。月1回だった人が月2回になれば、たとえ一杯ぶんを引いても、月の合計売上は伸びる。値引き額という“点”ではなく、来店頻度×客単価×継続月数という“面”で見れば、サブスクは原価を削る施策ではなく、LTVを積み上げる施策になる。
もう一つ多いのが「AIに任せて、変な配信が出たら怖い」という不安だ。ここは繰り返し強調したい。サブスクラインのAIは、下書きを作るところまでしかやらない。誰に・何を送るかをAIが提案し、文面と画像まで用意するが、送信ボタンを押すのは必ず人だ。店の言葉づかいや、出してはいけない情報を、最後にスタッフがチェックする。AIは“考える時間”を肩代わりしてくれる相棒であって、勝手に店の名前で発言する存在ではない。この承認制があるからこそ、世界観を大事にする一軒でも安心して任せられる。
導入の進め方——現場に無理なく載せる
「新しいツールを入れても、忙しい現場が使いこなせないのでは」。これも当然の心配だ。この店が意識したのは、一気に全部やらないことだった。最初に着手したのは、最も手間がかかっていた「あいさつ+ステップ配信」の自動化と、宴会予約のLINE化。ここは一度設定すれば自動で回り続けるので、現場の日々の作業はむしろ減る。次に、来店データが溜まってきた段階で、セグメント配信とAIパーソナライズへ広げた。
スタッフの巻き取りも、難しいことはしていない。会員証の提示を受ける、ポイントを付ける、AIが用意した配信の下書きを確認して送る——どれも数タップで終わる。「ITが得意なスタッフがいなくても回せたのが、何よりありがたかった」と店主は言う。困ったときに相談できるサポート体制があることも、個人店にとっては大きな安心材料だった。最初の一歩は小さく、データが厚くなるほど打ち手が増えていく。この順序が、現場を疲れさせずに成果へつなげる鍵だった。
検討中の飲食店オーナーへ — 店主からのメッセージ
「来店履歴をデータベースに持っているだけでは、宝の持ち腐れです。常連には通う理由を、宴会幹事にはまた選ぶ理由をつくり、来店が記録されるだけで、誰が常連で、誰が離れかけているか、どの宴会幹事が次に動きそうかが見えてくる。あとは、その人あての一通を、ちょうどいいタイミングで送るだけ。難しい運用はAIが提案・下書きしてくれて、送る前は必ず人が承認します。グルメサイトで一見さんを買い続けるのに疲れたら、一度来てくれた人と長く付き合う方へ舵を切ってみてほしい。世界観を大事にしたい一軒ほど、“1人ずつ”の配信は効きます。まずは無料で、自分たちのデータで試してみてほしい」。
まとめ:一斉の安売りより、常連と宴会を“1人ずつ”で育てる
LINEの平均ブロック率29.7%、飲食の業種中央値22.8%、ブロック理由1位は「頻度」。一方で国内利用者は1億人規模、3回来れば約9割が定着——。巨大なリーチと、高い離脱が同居するのがLINEの現実だ。グルメサイトの掲載コストが上がり続ける飲食店にとって、毎日の一斉安売りは、最も安い再来店チャネルを自ら細らせる。この矛盾を解く鍵は、“誰に”の先の“何を”、つまり配信を1人ずつに変えることにある。常連ドリンクサブスクで“通う理由”を設計し、宴会幹事のリピートを仕組みにし、ステップ配信で2回目の崖を越え、セグメントで閑散日と休眠を埋め直し、コース・予約のリマインドと事前決済で当日をなめらかにし、リッチメニューで動線を整え、AIパーソナライズが関連性を上げてブロックを下げ、AIエージェントが運用を止めずに回す。最後は必ず人が承認する。送る数ではなく一通の精度で勝つ——それが、路地裏の一軒が世界観を守りながら、常連・宴会・閑散日の三つの穴を埋めた道筋だった。
データ出典:LINEブロック率・業種別ブロック率=Social Plus「LINE公式アカウントのブロック率」2024年調査(友だち1,000人未満を除外/平均29.7%・飲食の業種中央値22.8%)。ブロック経験70%・理由1位「配信の頻度が多すぎる」26.5%・60代利用率69.0%=モビルス2025(655名調査)。国内LINE利用者数=LINEヤフー公表(約9,800万→2026年1億突破)。新規リピート約30%・3回来店で約90%継続=POS+/タカラベルモント。LINE開封率「約60%」は業界通説で一次出典が乏しく、諸説あります。当該店個別の数値(2回目来店率・宴会幹事の再予約率・サブスク継続率・反応率・閑散日の予約数・ブロック率・LTV)は当該店の実績にもとづく値です。
関連する導入事例・比較記事
- 「朝の常連」は、関係でつくる。来店サブスク×モバイルオーダー×AIパーソナライズ配信で2回目来店を約48%・LTVを+26%にした個人ベーカリーカフェのデータ全公開
- 「ととのうほど、通わなくなる」を覆す。通い放題サブスク×AIパーソナライズ配信で2回目来店を約52%・LTVを+29%にした会員制サウナのデータ全公開
- 初回の一杯で、終わらせない。定期便サブスク×AIパーソナライズ配信で2回目購入を約49%・LTVを+28%にした自家焙煎コーヒーECのデータ全公開
- 飲食店のLINEモバイルオーダー比較【2026年版】テイクアウト・店内注文の選び方ガイド
- LINEでサブスク(定期課金)を始める方法【2026年版】決済・会員管理ツールの選び方
